「興味があることはたくさんあるけど、実際の行動に移すのが苦手」という方は、いませんか。
後で読もうと思っていた記事や、行きたい場所をブックマークしても、保存したままになっているということは、よくありますよね。
大量の情報が、あらゆる媒体を通して入ってくる現代の生活で、自分が本当にやりたいことを常に意識し、行動へ移していくことは簡単ではありません。
今回は、そんな「やりたい」を実際の行動に移すための、サポートアプリを開発中の企業様に取材を行いました。

■合同会社Actria
合同会社Actria(以下、Actria)は2022年11月に設立され、アプリ開発やWebサイト作成、製品開発を行なっている会社です。社名は英語のActが由来にあり、本質的な課題の解決に向かって、意味のある良質なActionを起こしていきたいという想いが込められています。Actriaでは、UI/UXデザインの事業を展開しており、社内外でユーザーの体験価値を向上させるための新しい取り組みが推進されています。内部向けに、情報収集及び学習を快適に行える環境作りが行われています。
今回紹介するアプリ「Centam~死ぬまでに達成したい100のこと〜」は、ユーザーの「やりたいこと」の実現をサポートを目指しています。


■「Centam~死ぬまでに達成したい100のこと〜」とはアプリCemtum~死ぬまでにしたい10のこと〜の画像

 「Centam ~死ぬまでに達成したい100のこと〜」(以下、Centam)は、達成したいことや、必要なアクションを記録し、サポートするアプリです。
記録した内容をランダムにリマインドすることで、実際のアクションを促し、「やりたいこと」の実現をサポートします。また、作業に集中できる環境づくりをサポートする機能や、仲間と一緒に「やりたいこと」の実現を目指すSNS機能が現在開発中です。

Actriaには、情報収集を自動化することで、新しい情報を常にキャッチアップできる仕組みがあります。社内SNSで、心理学や行動経済学・脳科学、ビジネス全体の情報が流れるチャンネルを作成し、自然と様々な分野の知識が学べるようになっています。
また、社員同士でおすすめの記事を送り合う文化もあるのだとか。UXデザインにはメンバーの多様性が欠かせません。学んだことや興味のあることを共有し、高め合える仲間がいることは、知識のバリエーションを広げ、深い理解をもたらします。Actriaでは新しい取り組みにチャレンジしているベンチャー企業ならではの「学びながら共に考える文化」がありました。

人間の認知特性が考慮されたデザインは、体験価値の向上に繋がります。ここでは、Centamの機能に活用されている3つの心理学を紹介します。

■自律性がモチベーションに繋がる
脳の無意識領域は、自分が物事をコントロールしている状態」を好みます。「主体的にできる」・「自分1人でできる」という感覚は、やる気につながります。そして、主体的に取り組み何かを達成した経験は、特に人をやる気にさせます。
Centamでは、ユーザーの内側から生じる好奇心や決意を大切にし、それを実現するためのサポートをしています。Centamを使い、ユーザーが主体的に 「やりたいこと」を達成した経験は、ユーザーの「うれしい」体験に繋がっています。

■人は予想外の出来事を好む
私たちの脳は、無意識下で「今までなかった、新しいもの」を探すという性質があります。         そのため、予想外の出来事は注意を引くだけでなく、楽しい気持ちを引き起こします。SNSのスクロールがやめられないのは、更新する度に得られる情報が  予想外であるためです。
Centamでは、「やりたいこと」の通知にランダム性を持たせることで、それらを魅力的に認知させる工夫がされています。

■認知負荷
 人間の脳には、PCやスマートフォンと同じく、メモリのようなものがあり、その容量は限られています。新しい情報を認知する度に、その容量は圧迫さユーザーの脳には負荷がかかります。心理学の用語では、これを認知負荷といいます。認知負荷を最小限にすることは体験価値を向上させることに直結します。
Centamでは、認知負荷を減らすために、無駄な機能を省き直感的な操作ができるデザインが採用されています。

■実在するペルソナ


 ペルソナは一般的に、ユーザーリサーチを通して得た情報から作成した、架空のユーザー像のことを指します。
しかし、Actria では一般的なペルソナを活用するだけでなく、ペルソナを実在する⼈に置き換え、実際の⼈の声を元に開発が進められました。開発者は家族や、友人、同僚など、身近な人との対話を通して、ニーズを探り、その人に向けたデザインを行う手法です。
一般的なペルソナとの違いは、彼らのバックグラウンドや、普段の行動の様子から、エピソードの背景を想像しやすくなる点だと筆者は考えます。
人間の行動は、予測不可能です。プロダクトやサービスとの接点がない時間の行動も、ユーザー体験を考える上で参考になることが大いにると考えます。 その点、過去の経験や、肌で感じてきた「その人自身」という情報は、一般的なデプスインタビューよりもニーズの背景を深く探るきっかけとなり得ます。
UXデザイナーには、説得力が求められます。サービス案の説明をする際に、共感してもらう必要があるためです。 説得力のある説明には、エピソード形式が有効です。エピソード形式を用いた説明は、相手の脳に長く・正確に記憶が残り、共感もしてもらいやすくなります。
ペルソナの性格やバックグラウンド、普段の生活に基づく共通認識は、エピソードを聞き出し、その背景を深堀りする過程をスムーズにします。結果的に、多くのエピソードや、それにまつわる深い考察を得ることができ、説得力に繋がります。
 また、インタビュイーの緊張や警戒を取り除くことは、難しいことです。形式張ったインタビューという形を取らずとも、ユーザーがなるべく自然体でいられる状況で対話をする手法は、本音を引き出すチャンスを増やします。

開発者は、教育格差の解決にアプリで貢献していきたいと考えています。ユーザーが好奇心を主体的に行動へ移せるようなサポートをすることは、教育コストの削減に繋がります。
「子ども向けのアプリの開発も視野に入れ、勉強をしたいけれどできていない人だけでなく、したいと思えるような環境にいない人に向けて環境を擬似的に再現できるサービスを開発していきたい」と語ります。
正式版のリリースは2023年9月を予定しています。今後どのような機能が追加されていくのか目が離せません。

今回は、新たなUXデザインの取り組みを行う合同会社Actriaへ、取材を行いました。
既存の手法に囚われず、まずは実行してみる行動力には、UXの手法をアップデートしていく可能性を感じます。ユーザーを理解するためには、自分の頭の中で考えるのではなく、実在するユーザーを見て、話を聞くことが必要不可欠です。
それは、UXデザインの手法においても言えることなのかもしれません。UXデザインを行うために、既存の情報だけで判断するのではなく、実際にアクションを起こし試行錯誤を重ねることが、より良い手法が見つかる可能性を広げます。ユーザーのニーズを探るという発見的な作業をしているわけですから、その手法も、型にはまったアルゴリズム的なやり方である必要はないのです。
それぞれの企業でUXデザインの手法がアップデートされ、時代に合わせてUXデザインが多様化していく未来が楽しみですね。

■取材させていただいた企業様
合同会社Actria
所在地:〒546-0031大阪府大阪市東住吉田辺2丁目五番6-803号
代表者:代表取締役 横井秀平
設立:2022年11月
事業内容:製品開発事業、webサイト作成事業、アプリ開発事業
URL:https://actria.co.jp