皆様は、メガネにどのような印象があるでしょうか。従来までは、選べるデザインが少なく、「必要な人がかけるもの」だったのが、今やメガネを必要としている人に限らず、ファッションや生活に欠かせない重要なアイテムの一つとして幅広い人が購入できるよう変化を遂げています。
 メガネを必要とする人を広げ、印象をより身近な存在へと変えた背景にはどのような取り組みがあったのでしょうか。そして、これからどのような進歩が期待できるのでしょうか。これらをUXの観点から明らかにすべく、今回は、Zoff を運営する株式会社インターメスティック様へ取材に⾏ってきました。 株式会社インターメスティック様(以下、Zoff)は、メガネブランド「Zoff(ゾフ)」を運営している会社です。製造から販売までを⼀貫して行うSPAを、初めてメガネ業界に取り入れた事により低価格化を実現し、眼鏡をファションアイテムのように気軽に購⼊できるサービスを展開しています。

※マーケティング戦略本部デジタルマーケティング部部長兼E C事業部部長の井戸氏

 Zoff では、⾃社の強みを活かすことで、メガネの価値を最大限見出し、新たなライフスタイルを提案しています。
 UXデザインを⾏う際には、ユーザーの感情や、サービスを利⽤する前後の時間も考慮し、長期的なユーザーの成功体験をサポートしていくことが重要です。そのためにはまず、⾃社が持っている独⾃の強みに合ったコンセプトを作成し、それに沿って機能やサービスを選定していくことが必要です。そうすることで⼀貫性や独⾃性のあるサービスへと成⻑していきます。
 Zoffは、日本トレンドリサーチが実施した「メガネ店 満足度ランキング2020」において、「価格」「デザイン」「接客・サービス」「総合的な満足度」いずれにおいても第1位を獲得しており、デザイン性と価格、サービスを強みとしていることが分かります。商品の企画から製造、販売までの全てを⾃社で⾏うことで、「5,000 円から買えるメガネ」を実現し、⼿厚いアフターフォローでユーザーの満足度を向上させてきました。また、デザイン性が優れた新作フレームが頻繁に追加される点も独自の強みであると言えます。これらの強みを活かして、Zoffでは、メガネを複数本持ち、シーンによって使い分けるライフスタイルを提案しています。

■新たな需要を生み出す
 従来まで、メガネは視⼒の矯正器具として「必要な⼈がつけるもの」という印象がありました。また、従来はメガネ=高級品という印象が定着しており、複数本所有する人は少なかったと言えます。しかし、Zoffが豊富なデザインのメガネを低価格で購入できるようにしたことで、複数本のメガネを所有し、シーンに応じて使い分けるというライフスタイルを可能にしました。
 パソコンやスマートフォンを見つめる時間が増えた現代で、働く環境に応じて、ブルーライトから眼球を保護する機能は必要性を増しており、視⼒が良い⼈にとっても、メガネは欠かせないアイテムになりつつあります。また、ダテメガネやサングラス等も、ファッションアイテムとして気軽に着用できるようになりました。インタビューに応じて下さった井⼾⽒も、「視⼒は良いが PC 作業をする際や、⾞に乗るとき、外出時に日差しが眩しいとき等には、メガネやサングラスを使い分けている」と語っています。

■UXデザインの重要性
 メガネは長時間着用することが多く、その人の印象を大きく左右するため、人々の生活と密接に関係していると言えます。生活に大きな影響をもたらすアイテムであればあるほど、多くの人が最新で高品質なものを求める傾向にあります。例えば、スマートフォンの最新版を期待するのも、スマートフォンが人々の生活に欠かせない存在になったからと言えるでしょう。
 メガネが持つポテンシャルから、提供できる価値を最大限引き出し、必要性を効果的に伝えることで、人々の生活に普及し、恒久的に欠かせない存在へとなっていきます。
その過程で「人々の生活を、どう向上させるのか」というユーザー目線を常に意識することは重要です。この際に、メーカー側が想定するユーザーのニーズと、実際のニーズの乖離を減らしていくUXデザインが大きな力を発揮します。
 Zoffでは、独自の強みを活かしてメガネに新たな意味を見出し、メガネを必要とする人を広げる取り組みを行っています。

 Zoff では、ペインポイントを解消するだけではなく、ライフスタイルに新しい意味をもたらすことで、独⾃の価値を提供しています。
 UXデザインでは、理想の顧客体験を設定し、その体験を実現する最初のステップとしてペインポイントを解消します。現在不便な部分を便利にするだけではなく、顧客にとって嬉しい体験や成功体験に結びつけるためにはどうすれば良いかを考えます。
 UXデザインでは、ペインポイントに似た概念としてゲインポイントという⾔葉を使⽤します。ペインポイントは顧客の悩み・不満を解消し、「マイナスをゼロへ戻す」ことを意味しますが、ゲインポイントは、顧客にとって嬉しい体験を付加価値として加える、「ゼロをプラスにする」ことを意味します。顕在化している問題点を解消するだけでなく、まだ顕在化していない顧客が潜在的に求める要素を率先して形にしていくことで、顧客体験を最⼤化することができます。

 ■ペインポイントの解消
 Zoff では、ファッションを軸にしたブランディングを⾏なっています。「⽇本のメガネをファッションアイテムにしよう。」をコンセプトに、より多くの⼈にメガネを⾝近に感じてもらうことを⽬指しています。
 そのためにはまず、メガネを買いづらいと感じるポイントを解消する必要があります。店舗以外の場所でもメガネを購入したい方や、店舗購入時と同じ度数で複数本のメガネを購入したい方に向けて、時間や場所を選ばずオンラインでもメガネを購入できる仕組みを整えました。OMO(Online merges with Offline)を導⼊し、LINEとオンラインストアの連携を⾏うことで、スムーズに商品を購⼊できるようにしました。

■プラスを生み出すゲインポイント化戦略
 Zoff は新たなブランド戦略として「Eye performance」を掲げており、「“マイナスをゼロにする存在”から、“マイナスをプラスに変える存在”へ」をテーマにI Tを活⽤したサービス展開を進めています。メガネや店舗にITを導入することで人間の可能性を拡張し、顧客体験を洗練することをビジョンに掲げており、これまでにブルーライトカットコートの追加料金無料化や、スマートフォンでメガネやサングラスの試着ができる「Zoff Virtual Counter」が導⼊されてきました。メガネを視⼒の矯正器具に留めず、パフォーマンスを向上させたり生活を豊かにしたりするツールとして、その価値を最大限発揮できるような技術・サービス開発が進められています。

 Zoff では、⾃社の強みを活かしたコンセプトを設定し、ペインポイントをゲインポイント化する戦略を実施しています。これらの⽅針に沿って、店舗やデジタル接点の運⽤ではどのような⼯夫をしているのでしょうか。
 Zoff ではメガネを⾝近に感じてもらえるよう、ユーザーと⾼頻度に接点を持てる体験設計を⾏なっています。各種SNSを用途に応じて使い分けたり、WEB コンテンツを⼯夫したりすることで、ユーザーが知りたい情報を店舗に来店する前後にも⼿に⼊れられるようにしています。
 Zoff では年に複数回、キャラクターコラボ商品を販売しています。その際の告知⽅法には、拡散や話題化、ハッシュタグ検索に強いSNS が最適だと井⼾⽒は語ります。
キャラクターの熱狂的なファンが⽇頃情報収集しているツールは何かを調査することで効果的に宣伝を⾏うことができます。
 また、Zoff Staff CollectionというWEB コンテンツでは、店舗スタッフならではの視点でメガネのレビューが書かれており、顔の形や肌の色、ファッションに合うメガネ選びのポイントを、スタッフ自身の着用写真とともに等身大で発信しています。
 このように、コンセプトを踏まえたコンテンツの企画をすることで、サービスに⼀貫性が⽣まれ、顧客体験はさらに向上します。

後編の記事ではコンテンツの詳細やOMO施策についてくご紹介します。10月25日公開予定です。

■取材にご協⼒いただいた企業様
株式会社インターメスティック
 所在地:〒107-0061 東京都港区北⻘⼭ 3-6-1 オーク表参道 6 階
 代表者:代表取締役社⻑  上野博史
 設⽴:1993 年
 事業内容:眼鏡レンズ、眼鏡フレーム、サングラス、その他付属品の製造販売及び輸出⼊
 コーポレートサイト:https://www.zoff.com/