自由な働き方や副業が提唱され始めた令和の時代では、実際にフリーランスとして活動されている方も多いのではないでしょうか。特にフリーランスとして、IT業界で活躍されている方が仕事を探す際は、ネットを利用することが多いでしょう。しかし、ネット上でお仕事を探すときに、自分が正しく評価されるのか、安全な取引ができるのであろうかと不安を抱く方も多いかと思います。

今回は、そんなフリーランサーの方々と企業、クライアントが繋がるための、フリーランスマッチングプラットフォーム、『Lancers』を運営するランサーズ株式会社が、信頼性を担保する、新機能の「リピート指標」を実装しました。そんな「リピート指標」についてUXを踏まえて、担当者の方々に直接取材しにいってきました。

「リピート指標」とは、ランサーとクライアントの双方が築き上げてきた信頼関係を可視化することが目的です。結果、安心安全に取引ができるランサーとクライアントが評価される、そんな仕組みになっています。「リピート指標」がどのようなメリットをもたらすのか、また開発秘話など、本記事では取材結果をもとに書かせていただいています。

取材にご協力していただい方は、
プロダクト開発の成田氏
事業企画の中野渡氏
広報の川口氏
以上の 3 名になります。
取材させていただいた、ランサーズの方々の写真
※ランサーズ様エントランスで撮影。写真に映られている方は、左:中野渡氏 右:成田氏になります。

■ランサーズの概要
ランサーズは、「個のエンパワーメント」をミッションに掲げ、個人と企業をオンラインでマッチングする受発注プラットフォーム『Lancers』を運営しております。テクノロジーを活用した新しい働き方を提供することで、個人の生活・働き方、あり方を変革し、一人でも多くの個人が働き甲斐を感じられるよりよい豊かな社会づくりに貢献します。また、150万人を超えるフリーランスとの適切なマッチングにより企業の人材不足、生産性向上、DX化促進への課題にも寄与し、外部人材活用によるイノベーション、技術革新を推進しております。

■「リピート指標」導入の背景
クライアントとランサーの仕事を繋ぐ『Lancers』において、信頼性を担保し、安心安全な取引をすることが重要であるとランサーズは考えています。その中で「リピーター・リピート数」(※)は、信頼性を示す1つの指標であると考え、「リピート指標」を導入されました。

これにより、ランサーはスキルの証明や新たな仕事獲得の機会に繋がり、仕事を依頼したい発注者は、「実績数」「仕事の評価」「認証バッジ」等に加え、「リピーター・リピート数」を確認して発注することが可能となりました。
※リピーター:仕事を2回以上依頼している人数
※リピート数:リピーターとの仕事が継続した回数

本機能を開発した「品質向上委員会」(※)では、今後リピートされているフリーランスの検索が可能となるように、「リピート指標」を検索項目に追加することを検討しています。

※品質向上委員会とは:ランサーズ株式会社は『Lancers』を利用した受発注において仕事の依頼が適切に行われるよう、社内の管理体制強化や、より良い利用環境を提供することを目的として、品質向上委員会を設置しており、品質向上委員会では、月に1度利用者に対し、協議内容をもとにしたお知らせを発信している。

リピート指標についての画像

安心安全な取引をすることが重要であるという考えの元、信頼性をより強調するために「リピート指標」は作られました。今回導入した、「リピーター・リピート数」という指標は、数あるクラウドソーシングでも、あまり導入されていない機能であるため、ランサーズならではの、独自性を表現するとともに、信頼性を示す新たな指標として企画されました。

そうした経緯もあり、今回のプロジェクトでは、今まで関係性があったお得意様を、まずは「見える化しましょう」というところから、スタートしたそうです。今まで、ランサー側から、やり取りしたことがあるクライアントはみえていましたが、具体的な指標はなく、ぼんやりとしたものでした。

抽象的であったものを、「見える化」することで、いい体験を生み出すことができると判断され、企画が動き出したそうです。ちなみに、「リピート指標」には、今まで取引を行なったことのある関係者を、より大切にしてほしいという思いが込められているようです。これは数値が積み上がっていくことで「リピーター・リピート数」というのが視覚的にわかるので、より関係を実感して貰いやすくなる設計がなされているそうです。

加えて、「リピート指標」の数値が積み上がることで、現状のリピーターを大切にするだけではなく、新たにリピーターが増えていく体験まで考えられているそうです。今後のランサーズでは、そうした体験を反映し、大切にして欲しいという思いを持ち、実現に向けて動いているそうです。

実際に頂いた感想で、ランサー自身が「今まで、これだけのクライアント様に支えられてきていたことが分かった」「今まで、こんなにもやり取りしていたんだ」という、お声も届いているそうです。ランサーズのミッションと噛み合った形で「リピート指標」の体験づくりがされているため、仕事において大切にしたい、大切にするべき相手が一目でわかります。いい体験の好循環を生み出すランサーズならではのUXですね。

・これからランサーズで活動を始める方も大丈夫

今回の新機能では、一見、今までランサーズを愛用していた方が一番嬉しい新機能となっていますが、ランサーズでは、これから登録される方、登録されてしばらく活動されてなかった方のためのUXの設計もしっかりと考えられています。

前提として、ランサーズでは、プロフィールは自分自身の鏡と思って頂くため、自身のスキルの証明のために、プロフィールを充実させることを推奨しています。そのため、スキルや経験がある方であれば、しっかりとプロフィールを作り込むことで、十分に案件獲得に結びつきます。

それでも、自分のスキル感やプロフィールに力が足りないなと思われる方には、ランサーズが運営している「Lancers Digital Academy」(https://lancers.academy/)を履修してもらうことで、スキルを証明する「認証バッチ」を獲得できますので、そこでリスキリングをしてもらうことで自信をつけてから、案件獲得に向けてチャレンジするのもオススメしています。

実際に、実績数が少ない方でも、プロフィールが充実していればコメントや提案なども多数来るそうです。始めたてで自信がない方でも「認証バッチ」を獲得し、実際に「仕事を評価」してもらい、着実に「実績数」を重ねて「リピーターを増やす」という、一連の流れを踏むことで、今までより信頼性を高めやすい環境が出来上がっています。

特に重要視したものは、わかりやすさという点で、必要な情報に素早くアクセスするための UXを意識してデザインをしたそうです。クライアントが、発注先を探しているときの検索画面で、リピート率を見られる状態にする。直接、提案の声を頂いた際に、ランサーのプロフィールで、その人が「どれだけリピーターがついていて」「どんなやり取りをされているのか」というのを、その場で、すぐ見られるような状態を意識したそうです。

リピート指標についての画像
そうしたUXに拘った結果「リピート指標」は、既存の取引の行動過程に溶け込む形で、「リピーター・リピート数」が違和感なく、直感的に伝わりやすいデザインをされています。そのことからも、余計なものがない、分かりやすさを念頭に入れてデザインされたことが伺えます。

リピート指標についての画像
視覚的なデザインでは、過去の取引のデータを分かりやすくデフォルメすることで、現在のデザインが出来上がったそうです。実際にプロフィール上や検索画面で、すぐ分かる位置にさりげなく強調表示されています。こうした UIから、しっかりとしたユーザー体験を元に、考えられているのが伝わります。

・実装に至った期間について

「リピート指標」のプロジェクトの発足は、今年の 5月頃からだそうです。企画してからリリースまでの期間として考えますと、4、5ヶ月以内で「リピート指標」を導入したそうです。単純な開発速度も目を見張りますが、ランサーズほどの大きな企業がこれほどまでに身軽な動きができることに驚きを隠せません。

そのことについて、なぜこんなにも早く開発ができたのかと伺ったところ、何事においてもスピーディーな対応で一気に駆け抜けることを心がけたとのことでした。特に大きな課題としては、企画自体を通すのが一番の課題だったそうです。もちろん、過去のデータの処理が難しいということもあったそうですが、最初の段階でステークホルダーを巻き込み、企画をスピーディーに行うことで、早期に開発工程に進むことができたそうです。

実際の開発工程では、企画初期に固めた対象ユーザーやデザインをベースに、ウォーターフォールに近い形で一気に開発を行なったそうです。そして複雑に絡み合う仕様の、各セクションごと、確認を取るために周囲を巻き込みながら進めていくことで、社内の関係者全体が一丸となり、スピード感のある開発ができたそうです。

実際の企画から開発、リリースまで5ヶ月前後の実装になりますので、これだけの規模の新機能の導入を短期間で走り抜けてしまう、ランサーズに底知れない力を感じると共に、企画者のユーザーファーストの信念が感じられます。

「Lancers」は今後も、受発注者双方がより安心安全な取引を行えるように、「リピート指標」をベースにした検索機能などを検討しているそうです。ランサーズでは「誰もが自分らしく才能を発揮し、『誰かのプロ』になれる社会をつくる」と「すべてのビジネスを『ランサーの力』で前身させる」という2つのビジョンを掲げています。

このビジョンの実現のためにも、信頼されるフリーランスが活躍できるようなプラットフォームを目指していくとのことでした。

・開発目線での今後のランサーズのUX

ランサーズのシステムはリリースしてから、10年以上経っているため、どうしてもその都度、新機能の追加などの肉付けで進んできたこともあり、全体を俯瞰してみると、改善点が多数あるそうです。そのため、今後はUXデザイナーとフロントエンジニアが協力する形で、改善活動を進めているそうです。

「リピート指標」も今回は、新機能追加ということで、一気に導入したそうですが、今後はランサーズ全体を通して、デザインシステムと言われる、ランサーズにおけるUXの標準的なルールを敷いて、それを元に設計する段階に進んでいくそうです。それに合わせて、UIカタログを担うものを作成し、現在は要所要所に作成したものを追加し、全体のトンマナを合わせているそうです。もちろん、それ以外のWebアクセシビリティのところにおいても、調査ツールを使い、数値を見ながらの改善活動も常に行なっているとのことでした。

プラットフォームとして、人と人を繋ぐためのお仕事をしていることで有名なランサーズですが、短期間での新機能の導入や、UXデザイナーとフロントエンドによる、UXを統一するデザインシステムを作成するなど、単純な開発力だけではなく、企画を実行する推進力や、デザインの力も侮れません。

今回のインタビューでは、ランサーズのサービス提供側としての開発力の片鱗に触れられた気がします。ランサーズは、『Lancers』意外にも多くのサービスをリリースされており、どれも「個」のエンパワーメントという、ミッションに則した革新的なサービスが多いです。まだ、フリーランスが一般的ではなかった時代から、時代を席巻するかのように、フリーランスの市場を開拓したランサーズならではUXがどのように成長・進化していくのか、ランサーズの今後の動向が気になりますね。

以下、その他提供サービス
■ハイスキルITフリーランスを紹介「Lancers Agent」https://lancersagent.com/
■オンラインメンターサービス「MENTA」https://menta.work/
■メタバースで学べるハイスキルデジタル人材育成サービス「Lancers Digital Academy」https://lancers.academy/

【取材協力いただいた企業様】
ランサーズ株式会社 ( LANCERS,INC. )
所在地:〒150-0002 東京都渋谷区渋谷 3 丁目 10-13 TOKYU REIT 渋谷 R ビル 9F
代表者:代表取締役社長 執行役員 CEO 秋好陽介
設立:2008 年4 月
事業内容:フリーランス・タレント・プラットフォーム事業
URL:https://www.lancers.co.jp/

ランサーズロゴ