前回に引き続き、株式会社インターメスティックが運営するメガネブランドZoffが取り組んでいるUXデザインについて紹介します。
 前編では、自社の強みを活かして新たなライフスタイルを提案するコンセプト設計や、ペインポイントをゲインポイント化する新ブランド戦略について紹介しました。
まだご覧になっていない方は、こちらからご覧いただけます。
https://ux-media-qtm.com/zo%ef%ac%80-ux-1/
 後編では、UXを向上させるOMO戦略についてご紹介します。

 Zoffでは、OMO(Online Merges with Offline)のシステムを採用することでUXの向上に取り組んでいます。OMOとは、オンラインとオフラインを分けて考えず、行動を一連の流れで捉える考え方のことを指します。

 オンラインとオフラインの境界線を無くすことで、時間や場所の制限が減り、ユーザーのより細やかなニーズに対応したり、オンラインで得られたデータをオフラインで活用することで、ユーザー体験を更に向上させたりすることが可能になります。
 Zoffでは、WEBやSNS等のオンライン上の接点を強化することで、オンラインでも実店舗に来た時と同じような体験ができるよう、様々な試みを行っています。

■メガネを購入するハードルを下げる
 複数本のメガネを所有するライフスタイルを提案しているZoffでは、2本目以降のメガネの購入を簡単にすることが課題でした。一度購入して終わりではなく、シーンに合わせて複数本のメガネを購入してもらうためには、品質を保ちつつ、メガネの購入をより簡単にする必要がありました。品質を保つ為には、自分に合ったメガネを選ぶことが必要不可欠です。そのためには実店舗で検眼を行い、フレームの調節などを対面でしてもらう必要があります。
 Zoffでは、OMOの仕組みを採用することで、この課題解決に取り組んでいます。実店舗での初回購入時に、対面での接客を通じて視力測定や試着を行い、自分に合ったメガネを理解したうえで、購入してもらえるよう努めています。2回目以降には、初回購入時の度数データを利用してメガネやサングラスを作成できるようにすることで、オンラインでの購入体験を向上させています。また、オンラインストアとLINEのアカウント連携を行うことで、商品の完成通知をLINEで受け取れるようにしました。身近なSNSを用いることで生活に密着したサービスにする狙いがあると言います。

 井戸氏は、「今後、個人がメガネのサイズを把握できるようになれば、メガネがファッションアイテムのように、更に身近な存在になると思う。」と語っています。メガネのサイズや選び方等の知識を広めることで、洋服を選ぶように顧客が自身の力でメガネを自由に選び購入することが出来る状態を目指しています。

■オンラインストアでの体験の質を向上
 従来の方法では、メガネをオンラインで購入するのは大変困難でした。自分に似合うメガネが分からない人や、着用した際のフィット感は実際に試してみないと分からないと思う人が多くいるためです。そのため、店員さんに相談してメガネを選ぶことや、試着してメガネの着用イメージを確かめることは、必要な工程であり、オンラインストアの大きなハードルとなりました。
 2回目以降であっても「相談をして購入したい」「試着をしてから購入をしたい」というニーズは、変わらず顕在します。また、実店舗には「商品との出会い」として機能している一面もあります。実店舗へ行き、そこで展示されている商品の中から購入するメガネを決めるというケースが多いためです。
 Zoffでは、実店舗の体験と同等の体験をオンラインでも出来るよう、デジタルコンテンツの拡充を行っています。例えば、「Zoff Staff Collection」では、スタッフならではの視点で、メガネの選び方のポイントを紹介しています。専門的な知識を持ちながら、顧客の立場に立って商品を紹介することで、ユーザーがオンラインでもメガネ選びのポイントを知ることが出来ます。他にも、「Zoff Virtual Counter」というバーチャル環境で、メガネを試着できるサービスを開発し、オンラインでもメガネを着用したイメージを出来るようにしています。
 また、SNSでは日常的に触れるコンテンツの中にメガネを入れることで、生活を彩る一つの要素として紹介をしています。例えば、洋服や小物と一緒にメガネを紹介するトータルコーディネートの提案や、アウトドアスポーツをする際におすすめのメガネ等、メガネが活躍する具体的なシーンをコンテンツとして発信しています。これは、Zoffのコンセプトに基づく行動設計を達成するための効果的な施策と言えます。ファッション面で自分の生活を彩るひとつの要素として認識してもらうことに繋がっています。

 今後の展望として井戸氏は、「店舗での購入体験や購買データを活用し、オンラインストアでの購入におけるハードルを下げること」を強化していくことに力を入れたいと語っています。そのためには、オンライン上の接点を強化することで、OMOの仕組みを整えUXの向上を図る必要があります。今回紹介したオンラインコンテンツやSNSだけではなく、今後はデータとテクノロジーを活用し、顧客接点の質の向上と自動化を同時達成する取組も進めたいと語ります。例えば、閲覧商品やお気に入りに登録した商品、カートに入れたが購入に至らなかった商品に対して、類似商品をレコメンドするなど、顧客単位でパーソナライズされた提案をオンライン上で行えるような機能を検討しているそうです。「あなただけのおすすめ」や「あなただけのオファー」が出来るようになりUX向上に繋がります。AIを活用し、これまで気づかなかったような新しい商品との出会いを創出するなど、最新技術を使ったOMOの強化は今後も継続的に進められていくようです。

■取材にご協⼒いただいた企業様
株式会社インターメスティック
 所在地:〒107-0061 東京都港区北⻘⼭ 3-6-1 オーク表参道 6 階
 代表者:代表取締役社⻑ 上野博史
 設⽴:1993 年
 事業内容:眼鏡レンズ、眼鏡フレーム、サングラス、その他付属品の製造販売及び輸出⼊
 コーポレートサイト:https://www.zoff.com/