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セガというのはゲームセンターなどで見かけることが多いので馴染み深い方もいると思います。そんなセガを母体とした、『株式会社セガ エックスディー』に今回はUXについて担当役員でもある伊藤様に取材してきました。

伊藤様の写真

打ち合わせのためのスタジオも兼ねたオフィスで、今年移転したばかりだそうです。今回取材をさせていただいた株式会社セガ エックスディー 取締役執行役員CXO 伊藤氏は、株式会社セガでプランナー/ディレクターとして様々なゲームタイトルの開発に携わっていました。

株式会社セガ エックスディー について

一般的にセガというとゲーム事業を始めとするエンタテインメントを提供する企業をイメージする方も多いかと思いますが、セガと電通が出資するセガのグループ会社セガ エックスディーでは、企業の様々な課題に対してエンタテインメントを掛け合わせた“エンタテインメントソリューション事業”を展開しています。

エンタテインメントソリューション事業とは何でしょうか。

あらゆる企業が抱える課題に対して、セガで培ったゲーミフィケーションの知見やエンタテインメントを意識して練られる企画や視点の共有を行う事で課題解決を行う事業です。

例えば、介護業界にエンタテインメントを掛け合わせたサービスやソリューションを提供できれば人材不足の問題を解決できるかもしれませんし、農業にエンタテインメント性があれば、農業に新たな魅力が付加されてやりたくなる人が出てくるかもしれません。

このように企業課題の解決、ひいては社会課題の解決につなげて人々を幸せにしていきたいと思っています。

クイックパッケージとは何でしょうか?

クイックパッケージとは、今までセガ エックスディーが行ってきたプロジェクトのノウハウの中で、企画部分をさらに細分化し、お客様にライトな感覚で相談していただくためのパッケージです。

クイックパッケージの内容

・ショートアイデアソン

ブレインストーミング等を企業で行うと、どうしても会社のこれまでの実績や利益、体制などを念頭に入れて意見が出されることが多いと思います。

私達の場合には、合理性が一見無いように見えるような新たな発想を提供することができます。セガグループならではの“企画・アイデア・視点”を提供し、企業が直面している課題解決の支援を行っています。

・クイックUI/UXコンサルティング

ゲームUXを元に考えられる、UI/UXの具体的な改善アイデアをリスト化し、処方箋のようにお出しするものになります。今のところは既存のサービスをよくしたい企業からのご依頼が多いです。

既存のサービスのUIに対して「これは使いやすいデザインですけれど、使いたくなるデザインではないですよね」というところをお伝えし、ゲーミフィケーション的な行動心理学に沿った形でユーザーさんの気持ちをしっかり動かすUI/UXを提示し、一緒に考えていくサービスになります。

・ライトプロトタイピング

プロトタイピングというのは、簡単に言うと「もういっそのこと動くものを作ってしまおう」というサービスです。

サービスを作るときに、最初からエンジニアを入れて進めていくと工数が多く掛かるので、コストが数千万円掛かることも珍しくありません。そこで、まずはデザインと触れるような形で、”どういった体験ができるか”をわかる形にする支援を行なっています。

セガXDにおける UXとは

以前ゲーム制作に携わっている時に“ゲームの価値”について疑問を抱きました。その時感じた事は、“意味はないかもしれないけれどやりたくなる”。それこそが、ゲームの本質でもあり、セガ エックスディーが考えるUXにおいて大切にしている”心が動く”ことであると、ゲーム制作を通して感じました。
現在様々な企業様の課題と向き合っていますが、この重要性は、他の分野でも活かせるものであり、我々の提供するエンタテインメントを通じて世の中の課題を解決したいと考えています。

ゲームUXを源流とした使いたくなるUX

セガXDのUXは一般の会社の考えるUXとは毛色が違うと思います。UXはユーザーさんにとって使いやすいことを中心に考えますが、ゲームの場合にはあえてユーザーさんに負荷をかけるように設計することもあります。

その為、一見非合理的な思考から生まれ常識に囚われないUXをゲームでは取り入れています。ゲームやエンタテインメントで培った企画力やゲーミフィケーションを中核にしたUXやサービスデザインは、”使いたくなるUX”を提供しています。

使いやすいではなく、使いたくなるUX

一般的なUXではユーザビリティのことを第一に考え”使いやすい”UI/UXをデザインします。しかしセガ エックスディーにおけるUXでは使いにくくすることもいとわない”使いたくなる”UI/UXを目指しています。

もちろん、一般的にいう合理的なUXを蔑ろにするわけではないですが、あえて違った視点を共有することにより、他とは違った価値を提供できます。

ここまでセガ エックスディー独自のUXにこだわる背景には、今までエンタテインメント分野で豊富な経験を持つセガとしてのノウハウによるところが大きいです。

また合理的で一見その通りだけども誰でも思いつくようなアイデアを出すのは、僕らのバリューではないと思っています。一方で合理的な回答に関しては、その業界に詳しい人が合理的に考えていただいた方が絶対にいいと思っています。

エンタメ業界ではない企業様からのご相談について、我々はその業界に詳しくないからこそ、俯瞰して見ることができて、一見合理的ではないけれど重要な要因を見つけることができる。この思考法は行動経済学にある”人間は必ずしも合理的な行動をしない”という考えに近いです。

これからは共感の時代

セガの考えるUXの中でさらに重要視されているものの一つに”共感”というキーワードがあります。

今やスマートフォンひとつ持っていれば、世界中どこにいてもあらゆる情報が入手できる時代になっているため、そもそも興味を持たれないと選ばれない時代になってきています。

それにより、今では”共感できる・共感できない”がユーザーの判断基準として高くなりつつあるため、ユーザーの求めるものが、機能的なニーズから情緒的なニーズに変化してきています。「無知だからこそできる、でも共感してもらえる」UXをセガ エックスディーは提供していきます。

待ち時間としての考え方

例えば、待ち時間のストレスの解消、という課題があった際に一般的なUXでは”待つ時間の短縮”を目指すことが多いですが、セガ エックスディーでは”待つ時間を楽しくする”方法を考えます。

結果的に待つ時間は変わらなくとも、並んだ際の体験として”楽しかった”という感情が強く残るユーザー体験を提供した方が、長期的な視点では非常に優れた体験デザインとなります。

ユーザーが共感することを目的として、心を動かすための”衝動”をどう表現させ体験させるのかというアイデアの出し方を提供するのが私達のUXになります。

ファクトファースト

UUXをデザインする上で、非合理的な思考と共感を大事にしているということはお伝えしたのですが、それ以外にも”ファクトを持つ”ということは意識しています。

ゲーム開発では、クリエイターの直感で仕様を決めることも多く、そしてそれが結果的に良い結果をもたらすこともありました。しかし、時代の変遷だと思うのですが、今ではゲーム業界でもそういった直感や発想といったものにも根拠を求められるようになってきています。

そういった背景もありまして、非合理的なアイデアでもファクトを第一に考えています。もちろんアイデアが先でも良いのですけれど、その根拠として統計データやソーシャルリスニングを利用したファクトチェックを行うことを徹底しています。

なぜ今回”クイックパッケージ”をリリースされたのでしょうか?

・セガ エックスディーのビジョン

クイックパッケージをリリースした背景には、母体であるセガとセガ エックスディーのビジョンが深く関係しています。セガのビジョンに”エンタテイメントを通して世の中をカラフルにしていく”というものがあるのですが、

そこをさらに踏み込んだ形で”企業や社会が抱えるあらゆる課題に、ゲームづくりで培ったエンタテインメントの力を掛け合わせることで解決していく”というものがセガ エックスディーのビジョンになります。

・セガ エックスディーの役割

私達の本当にやりたいことは“多くの会社や多くの人に対して”エンタテインメントの概念を提供して、それぞれが抱えている課題へのアプローチの方法としてエンタテインメントの可能性に気づいてもらうことです。そして、それを伝えていくのがセガ エックスディーの役割だと考えています。

・理想とのギャップ

今までは大企業と連携して行う仕事が多かったために、結果として特定の企業にのみサービスを提供してきました。もちろん、ありがたいことなのですが、私達が本当に行いたかったことと離れてしまっている気がしました。

より多くの企業に私達のエッセンスを提供するために、今まで培ってきたノウハウの一部を体系化し、よりライトに提供できる形にしたものが今回の”クイックパケージ”になります。

セガ エックスディーの今後の展開について教えてください

新しい領域エックステイメント

デジタルとリアルの融合したビジネス領域を指す”X-Tech(エックステック)”というものがありますが、今ではすでに一般化した考えになりました。

それと同じように、世の中のあらゆる分野とエンタテインメントを融合させて”X-Tainment(エックステイメント)”という新たな領域を作り認知形成を図っていきたいと考えています。

私はエンタテインメントの本質は”衝動”だと思っています。そして”衝動”を通して人の心を動かすことでビジネスが生まれ、その結果ユーザーのQOL(Quality of Life)が上がることにつながると思っています。

そのためにも、もっと多くの企業と接触して私達のエッセンスを広めていきたいので、まずは気軽にご相談いただければ嬉しいです。

私のすごく好きな言葉で「人はパンのみにて生くる者に非ず」(人は物質的満足だけを唯一の目的として生きるものではないという意)というのがあります。私自身はキリスト教徒ではないのですが、というのがあり、強く感銘を受けた言葉になります。

人が生きていくためには、衣食住だけでは足りなくて、むしろそれ以外のものが大事にされてきていた。ということがこの言葉から読み取れます。

この言葉は大昔からある、今でも通じる普遍的な価値観であり、今の人たちにこそ必要な考え方で、多くの人たちがそれを求めていると私は信じています。

コロナを機に今までの生活様式がガラリと変わり、改めてそのことを実感している人も多いのではないでしょうか。

だからこそ、私達がそのハブになりたいと思っていて、あらゆる社会課題や企業課題を解決していくことを通して、世の中をカラフルにしていければ、X-tainment(エックステイメント)が具現化された世界も遠くないと思っています。

まとめ

今回の取材を通して、株式会社セガ エックスディー様におけるUXのあり方やクイックパッケージをリリースした背景などがわかりました。それだけではなく、様々な企業課題・社会課題の解決方法として”非合理”という一見合理的ではないアイデアも必要なのかもしれないということに気づかせていただきました。

また、伊藤氏が言っていたように、これからはユーザーの求めるものは機能的ニーズから情緒的ニーズに移っていくため、今まで以上に”共感”というキーワードが重要となってくるということで、今後は”使いたくなるUX”の需要が高まってくるかと思います。

そしてその価値観を元に作られる新たな領域”X-tainmentエックステイメント”というのも非常に興味深いものでした。クロステイメントが一般化していけば、あらゆる業界の活性化につながると思います。

ご興味がわいた方がいらっしゃれば、是非式会社セガ エックスディーまでお問い合わせください。

また、UXメディアではUXに関する記事の制作を行なっています、是非取材して欲しいという方がいましたら、お問い合わせフォームから『エスペーログループのUXメディア』までご気軽にご連絡ください。

取材させていただいた企業様
株式会社セガ エックスディー
所在地:〒160-0023
東京都新宿区西新宿6丁目18番1号
住友不動産新宿セントラルパークタワー 20階
代表者:代表取締役社長執行役員CEO 尾崎 雄一
設立:2016年8月1日
事業内容:エンタテインメントソリューション事業
URL:https://segaxd.co.jp/